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トップ > マンチキン > マンチキン - 人気ブログ(Blog)検索結果詳細 (2008年8月29日 9時)
黒と白の。
古い娼館の扉は、立て付けが悪く、音も漏れやすい。 通りかかったその娼婦が、声に気付いたのはまさに運としか言いようがなかった。 「う…ぐ……」 息が詰まったような呻き、そして、狂ったような笑い。 「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!」 そっと扉の隙間から覗き込んだ少女は、思わず手にしたシーツの束を取り落とした。 「女主(マダム)!大変!!」 まっすぐに女主の部屋に飛び込むと、彼女は叫んだ。 ...
作者:dasuku
更新日:2008年8月30日 3時57分
変化
私はきっと、変わってしまったんでしょうね、とエルスは呟く。 藤の枝に、ちょこんと腰掛ける彼女の瞳に黒い睫の影が落ちた。 確かに彼女と初めて会った時の、人生を諦めた老人のような、空虚でありながらどこか達観したような雰囲気はすでになく。 多分、生来のものであるだろう少女のような、柔らかな微笑が瞳に湛えられている。 元々の彼女は、多分、こんな女性であったに違いない。 花も、鳥も、世界も、全てを愛して、笑っているような。
作者:dasuku
更新日:2008年8月20日 1時8分
無題。
体だけの関係で満足か?と問われた。 「他に何があるんです?」 鏡の前で、左手だけで髪を梳きながら聞き返す。 娼婦を買っておいて。幾夜となくこの屋敷に引き止めて、愛人を囲ったつもりにでもなっているのだろうか。 「私はお前に、家も地位も与えることが出来る。…その、心も」 最後に、自信なげに囁かれた言葉に、思わず苦笑を浮かべた。 「貴方は、私を亡くなった奥様と重ねているだけ。ただ、それだけですよ」 寝台の上に膝を乗せ、自由にならない右手の代わりに、起き上がった彼の額に自分の額を当てる。 「束の間の...
作者:dasuku
更新日:2008年8月13日 3時42分
生きていてよかった それを感じたくて
生きているのが辛くて、怖くて仕方なかった頃。 もう二度と会えない人の言葉だけに縋って、笑って生きられるほど私は強くなかった。 「命は、大切なものなのよ」と…。 よく晴れた夏の朝だった。町外れの川べりに、跪く女性の姿があった。 髪は雪のように白く、背をしゃんと伸ばし。 その人は、川べりに置かれた、大きな石を撫でていた。 思わず、吸い寄せられるように近づく。 「ここで戦いがあったのよ」 女性は、私の気配に気付いて、振り返りながら言った。 「生き残ったのは私だけだった」 女性は、紙で出来た小さな人...
作者:dasuku
更新日:2008年8月9日 19時57分
繰り返し。
貴方の隣には、誰よりも綺麗で、優しいひとが居るべきだと思っていた。 この国には、本当に素敵な姫君が大勢いらっしゃって。 女の私から見ても、この上なく美しくて。 貴方の隣で笑っている姿が、めまいがするぐらい似合っていて。 貴方はいつも振り返って下さるけど。 いつか、ここに居る私を忘れて、誰かの手を取り行ってしまうのだと思っていたから。 腕に抱きしめられる喜びに酔いながら、永久の別れを近く感じる。 恋する女は、誰でもそうなのだろうか。 それならば、貴方と離れる時にこの身が消えるのは、酷く運のいい...
作者:dasuku
更新日:2008年8月9日 2時17分
罪の城
まったくめんどうな、と心の中で呟き、天使ライラは幅広の帽子に飾られた造花をちょっと直してから、議会の中心部に進んだ。 天使には珍しい、漆黒のワンピースの裾がひらめく。 そこは、ぐるりとすり鉢状に天使たちが並ぶ、天界の最高機関だった。 すり鉢の底に、一人の天使が跪いているのが見える。ライラはその隣に立った。 「お前が、あの子供に魂を運んだのか」 声が議会中に響き渡る。声の主を探して上を見上げても、そこには激しい後光がいくつも差すだけで、何も見分けられはしない。 「それが私の仕事ですわ」 ライ...
作者:dasuku
更新日:2008年8月3日 2時9分
問いかけ。
幸せで、幸せで仕方ないと、時々、その裏返しで不安になる。 …どうして、貴方はそんなに優しくして下さるの? 私が貴方を好きだと言ったから? 可哀想だと思って下さったから? 私なんかじゃ、貴方の心を得ることなど、身の程知らずもいいところなのに。 貴方は、私を抱きしめて甘い口付けを下さる。 可愛い、愛しいと、甘い言の葉を下さる。 どうして、どうしてなのですか? その答えに囁かれた言葉を、私は何度も心深く受け止めて、それでもまだ信じきれずに。 繰り返し、馬鹿のように問い直す。 …優しくし...
作者:dasuku
更新日:2008年7月31日 3時12分
意地悪
「私の全てはあの方のものなんです」 だから、意地悪しないで、と少女は青目の天使の腕の中でジタバタと暴れた。 「もしかしたら、彼は君のことなんていらないかもしれないよ?」 「……」 「それとも、君は誰かの身代わりなのかもしれないね。彼が君なんかを本気で欲しがる筈がないだろ」 「………!」 暴れる力が少し弱まった。 これは上手く行くかな、と天使はもう一押しする。 「大体、君なんて魔力も弱いし特別な力があるわけでもなし。 彼にはなんの役にも立たないじゃないか」 「…いいんです」 俯いていた少女...
作者:dasuku
更新日:2008年7月30日 1時31分
遠い記憶
神のために生まれた、何千何万という子供たち。 その中から、一人、巫女姫が選ばれる。 何故、どうやって選ばれるのか、それは誰にも分からない。 容姿、はもちろん関係ない。 声も。 楽や舞の才能も、神殿では重宝されるが、意味はない。 特別な能力があるわけでもない。 血筋も。 生まれた日も。 親も。 性格さえ。 ただ、強いていうならば、と天使が言った。 その魂に、どれだけ神を受け入れられるかということ。 神に縋らなくては生きていけない、寂しく空っぽな子供たちの中で。 より大きく、虚ろな、寂しい心...
作者:dasuku
更新日:2008年7月19日 1時53分
目隠しで感じて【お題】
例えば、私は。 考えてから行動する方だと思う。 それなのに。 気付いたら、手が伸びていて。 気付いたら、視線が追っていて。 見えない貴方が、軽く笑ったような気配。 どうしようもない、私の体が、心が勝手に。 貴方の背中に手を回して、顔を埋めて。 その香りを感じていたいと言うんです。
作者:dasuku
更新日:2008年7月10日 2時27分